子どもたちがどんな権利を持っているのか知っていますか?それら全てが「子どもの権利条約」に詳しく書かれています。
この条約は、世界中の全ての子どもたちがもつ権利を具体的に定め、各国にそれらの権利を守る責任を課しています。
この記事では、その子どもの権利条約の中身と、その理解を深めるユニセフの教材「カードブック」と「ポスター」について紹介します。
子どもの権利条約とは
子どもの権利条約は、世界中の全ての子どもたちの権利を保護するための重要な文書です。
1989年に国連総会で採択されたこの条約は、18歳未満の子ども達に対して、生存権、発達権、保護権、参加権といった基本的な権利を定めています。
さらに、特に配慮が必要な子どもたちの権利についても詳細に述べられています。
この条約は、世界共通の子どもの権利の基準として、196の国と地域によって批准され、世界で最も広く受け入れられている人権条約となっています。
日本も1994年にこの条約を批准し、日本国内の子どもたちの権利の保護と向上に向けて努力を続けています。
ユニセフと子どもの権利条約の関係
ユニセフ(国連児童基金)は、子どもたちの基本的な権利を全世界に広め、守るために活動しており、子どもの権利条約の策定と普及、そしてその実践にも深く関わっています。
第45条にはユニセフの名前が示されています。
ユニセフの活動の基盤は「子どもの権利条約」そのものと言えます。
日本ユニセフ協会も、子どもの権利条約の実践に力を注いでいます。ウェブサイトでは、条約について学び、子どもの権利を尊重するための教育プログラムや具体的な実践例を紹介しています。
子どもの権利条約の4つの原則
子どもの権利条約には、以下の4つの原則があります。
- 差別の禁止
すべての子どもは、人種、国籍、性別、宗教、意見、障がい、経済的状況などに基づく差別を受けず、平等に権利を享受する権利があります。 - 子どもの最善の利益
子どもに関するあらゆる決定や行動は、その子どもの最善の利益を第一に考慮しなければなりません。子どもの福祉と発展が最優先されるべきです。 - 生命、生存、発達に対する権利
すべての子どもは、生命が守られ、生まれ持った能力を最大限に発展させるために必要な医療、保護、教育、生活支援などを受ける権利があります。 - 子どもの意見の尊重
子どもは、自分に関係する事柄について自由に意見を表明し、その意見が子どもの年齢と成熟度に応じて尊重される権利があります。子どもの意見は、子どもの発達と福祉に関する決定に反映されるべきです。
これらの原則は、子どもの権利を保護し、子どもたちが健やかに成長し、自己を発展させるための基盤となっています。また、これらの原則は、子どもの権利条約を実践する上での指針となります。
子どもの権利条約の内容は?
子どもの権利条約は前文と本文54条からなりますが、日本ユニセフ協会が分かりやすいように1~40条に抄訳しています。
子どもの権利条約(日本ユニセフ協会抄訳)
第1条 子どもの定義
18歳になっていない人を子どもとします。
第2条 差別の禁止
すべての子どもは、みんな平等にこの条約にある権利をもっています。子どもは、国のちがいや、性のちがい、どのようなことばを使うか、どんな宗教を信じているか、どんな意見をもっているか、心やからだに障がいがあるかないか、お金持ちであるかないか、親がどういう人であるか、などによって差別されません。
第3条 子どもにもっともよいことを
子どもに関係のあることが決められ、行われるときには、子どもにもっともよいことは何かを第一に考えなければなりません。
第4条 国の義務
国は、この条約に書かれた権利を守るために、必要な法律を作ったり政策を実行したりしなければなりません。
第5条 親の指導を尊重
親(保護者)は、子どもの発達に応じて、適切な指導をします。国は、親の指導を尊重します。
第6条 生きる権利・育つ権利
すべての子どもは、生きる権利・育つ権利をもっています。
第7条 名前・国籍をもつ権利
子どもは、生まれたらすぐに登録(出生届など)されなければなりません。 子どもは、名前や国籍をもち、できるかぎり親を知り、親に育ててもらう権利をもっています。
第8条 名前・国籍・家族関係が守られる権利
国は、子どもが、名前や国籍、家族の関係など、自分が自分であることを示すものをむやみにうばわれることのないように守らなくてはなりません。
第9条 親と引き離されない権利
子どもには、親と引き離されない権利があります。子どもにもっともよいという理由から引き離されることも認められますが、その場合は、親と会ったり連絡したりすることができます。
第10条 別々の国にいる親と会える権利
国は、別々の国にいる親と子どもが会ったり、一緒にくらしたりするために、国を出入りできるよう配慮します。親がちがう国に住んでいても、子どもは親と連絡をとることができます。
第11条 よその国に連れさられない権利
国は、子どもが国の外へ連れさられたり、自分の国にもどれなくなったりしないようにします。
第12条 意見を表す権利
子どもは、自分に関係のあることについて自由に自分の意見を表す権利をもっています。その意見は、子どもの発達に応じて、じゅうぶん考慮されなければなりません。
第13条 表現の自由
子どもは、自由な方法でいろいろな情報や考えを伝える権利、知る権利をもっています。
第14条 思想・良心・宗教の自由
子どもは、思想・良心・宗教の自由についての権利をもっています。
第15条 結社・集会の自由
子どもは、ほかの人びとと一緒に団体をつくったり、集会を行ったりする権利をもっています。
第16条 プライバシー・名誉の保護
子どもは、自分や家族、住んでいるところ、電話やメールなどのプライバシーが守られます。また、他人から誇りを傷つけられない権利をもっています。
第17条 適切な情報の入手
子どもは、自分の成長に役立つ多くの情報を手に入れる権利をもっています。国は、本、新聞、テレビ、インターネットなどで、子どものためになる情報が多く提供されるようにすすめ、子どもによくない情報から子どもを守らなければなりません。
第18条 子どもの養育はまず親に責任
子どもを育てる責任は、まずその両親(保護者)にあります。国はその手助けをします。
第19条 あらゆる暴力からの保護
どんなかたちであれ、子どもが暴力をふるわれたり、不当な扱いなどを受けたりすることがないように、国は子どもを守らなければなりません。
第20条 家庭を奪われた子どもの保護
家庭を奪われた子どもや、その家庭環境にとどまることが子どもにとってよくないと判断され、家庭にいることができなくなった子どもは、かわりの保護者や家庭を用意してもらうなど、国から守ってもらうことができます。
第21条 養子縁組
子どもを養子にする場合には、その子どもにとって、もっともよいことを考え、その子どもや新しい親(保護者)のことなどをしっかり調べたうえで、国や公の機関だけが養子縁組を認めることができます。
第22条 難民の子ども
自分の国の政府からのはく害をのがれ、難民となった子どもは、のがれた先の国で守られ、援助を受けることができます。
第23条 障がいのある子ども
心やからだに障がいがある子どもは、尊厳が守られ、自立し、社会に参加しながら生活できるよう、教育や訓練、保健サービスなどを受ける権利をもっています。
第24条 健康・医療への権利
子どもは、健康でいられ、必要な医療や保健サービスを受ける権利をもっています。
第25条 施設に入っている子ども
施設に入っている子どもは、その扱いがその子どもにとってよいものであるかどうかを定期的に調べてもらう権利をもっています。
第26条 社会保障を受ける権利
子どもは、生活していくのにじゅうぶんなお金がないときには、国からお金の支給などを受ける権利をもっています。
第27条 生活水準の確保
子どもは、心やからだがすこやかに成長できるような生活を送る権利をもっています。親(保護者)はそのための第一の責任者ですが、必要なときは、食べるものや着るもの、住むところなどについて、国が手助けします。
第28条 教育を受ける権利
子どもは教育を受ける権利をもっています。国は、すべての子どもが小学校に行けるようにしなければなりません。さらに上の学校に進みたいときには、みんなにそのチャンスが与えられなければなりません。学校のきまりは、子どもの尊厳が守られるという考え方からはずれるものであってはなりません。
第29条 教育の目的
教育は、子どもが自分のもっている能力を最大限のばし、人権や平和、環境を守ることなどを学ぶためのものです。
第30条 少数民族・先住民の子ども
少数民族の子どもや、もとからその土地に住んでいる人びとの子どもは、その民族の文化や宗教、ことばをもつ権利をもっています。
第31条 休み、遊ぶ権利
子どもは、休んだり、遊んだり、文化芸術活動に参加したりする権利をもっています。
第32条 経済的搾取・有害な労働からの保護
子どもは、むりやり働かされたり、そのために教育を受けられなくなったり、心やからだによくない仕事をさせられたりしないように守られる権利をもっています。
第33条 麻薬・覚せい剤などからの保護
国は、子どもが麻薬や覚せい剤などを売ったり買ったり、使ったりすることにまきこまれないように守らなければなりません。
第34条 性的搾取からの保護
国は、子どもが児童ポルノや児童買春などに利用されたり、性的な虐待を受けたりすることのないように守らなければなりません。
第35条 誘拐・売買からの保護
国は、子どもが誘拐されたり、売り買いされたりすることのないように守らなければなりません。
第36条 あらゆる搾取からの保護
国は、どんなかたちでも、子どもの幸せをうばって利益を得るようなことから子どもを守らなければなりません。
第37条 拷問・死刑の禁止
どんな子どもに対しても、拷問や人間的でないなどの扱いをしてはなりません。また、子どもを死刑にしたり、死ぬまで刑務所に入れたりすることは許されません。もし、罪を犯してたいほされても、尊厳が守られ年れいにあった扱いを受ける権利をもっています。
第38条 戦争からの保護
国は、15歳にならない子どもを軍隊に参加させないようにします。また、戦争にまきこまれた子どもを守るために、できることはすべてしなければなりません。
第39条 被害にあった子どもの回復と社会復帰
虐待、人間的でない扱い、戦争などの被害にあった子どもは、心やからだの傷をなおし、社会にもどれるように支援を受けることができます。
第40条 子どもに関する司法
罪を犯したとされた子どもは、ほかの人の人権の大切さを学び、社会にもどったとき自分自身の役割をしっかり果たせるようになることを考えて、扱われる権利をもっています。
ユニセフ|子どもの権利条約のカードブックとは?
「子どもの権利条約カードブック」とは、ユニセフが作成した「子どもの権利条約」の条文をわかりやすく要約し、イラストつきのカードにした冊子です。
このカードブックには、子どもの権利条約の1条から40条までが収録されており、子どもたちが自分たちの権利を理解しやすくなっています。
カードブックは、公式サイトからダウンロードしたり資料請求したりすることができます。
ユニセフは、子どもたちが自分たちの権利を理解し、守ることができるよう、子どもの権利条約カードブックを活用した教育活動も行っています。
ユニセフ|子どもの権利条約のポスターとは?
ユニセフは、「子どもの権利条約」の普及を目的として、各条文にちなんだアイコン付きのポスターを制作しています。
このポスターには、子どもたちが自分たちの権利を理解しやすくなるよう、各条文に対応するアイコンが描かれています。
アイコンは、世界中で通じるシンプルでユニバーサルなデザインになっており、子どもたちが自分たちの権利を知ることができるようになっています。
ユニセフの教材を活用して、子どもの権利条約の理解を深めよう
子どもの権利条約カードブックや子どもの権利条約ポスターを活用することで、子どもたちは自分たちの権利について理解を深め、自分たちや他の人々がこれらの権利を尊重するための行動を学ぶことができます。
また、大人たちもこれらの教材を通じて子どもの権利についての理解を深め、子どもたちの権利を尊重し保護する方法を学ぶことができます。
これらの教材は、私たちが子どもの権利条約を理解し、尊重し、実践するための強力なツールとなるので、ぜひ利用してみましょう。